アジアのMakers by 高須正和
海外Maker Faireへの出展ブーム 100人規模の日本人Makerが台湾や深センなどへ
11月に相次いで行われるMaker Faire Taipei(2017年11月3~5日)、Maker Faire Shenzhen(2017年11月10~12日)にはどちらも多くの日本人出展者が参加している。日本から距離が近く、一度参加した人がまわりを誘うこともあって、参加者は倍々で増え続けている。今回の台湾ではおそらく50人ほど、深センでは100人ほどの規模になり、それぞれ現地では大ミートアップも行われる。
今年は日本人メインのミートアップも行われる
ミートアップは「同じ場所に集まって、会う」という意味で、オフ会と同じような感じだ。ビジネス系のミートアップはお互いの名刺交換から始まるし、Maker系だとデモを持ってくることがある。今のMaker Faire Tokyoは昔はMake Tokyo Meetingと称していて、DIYをしている同士が出会う、より同人的なイベントだった。お祭り、「フェア」となった今もその精神は受け継がれている。
深センも台北も、日本人参加者がせいぜい20人ほどで、ほとんどが出展者だった数年前はブースをまわれば全員と挨拶できたが、数十人を越える規模になった、今の台北や深センではそうもいかない。なので、現地でそれぞれ日本人メインのミートアップを行うことにした。
「同じイベントに出展した」というのはかなり仲間意識が発生する。さらに希な機会である「同じ海外のMaker Faireに出展した」というのはすごく仲間意識が発生するもので、出会ったMaker達が現地で意気投合し、その後で別のMaker Faireに海外出展することも多い。今回の台湾や深センでも、かつて僕の企画で海外のMaker Faireに共同出展や見学に行った人たちが、その過程で仲間を見つけて、自分たちでブースを構えるようになった例がいくつもある。
僕自身の興味としても、もっと海外出展のムーブメントを加速していきたい。日本のMakerは、アジアのMaker Faireでたいへんに評判がよく、どこでも人気者である。メディアでは日本のものづくりの危機が叫ばれ、それはそれで事実ではあるが、日本のDIYのクリエイティビティやクオリティが大人気なのも事実である。なので、今回台北や深センに集まった人同士が出会い、交流することで、海外のMaker Faire参加が促進されることを願って、ミートアップを企画した。おそらくこうして海外で出会った同士が、また台北や深センのMaker Faire、さらにはほかの海外のMaker Faireに出展していき、その熱はMaker Faire Tokyoにも還元されていくだろう。
いずれもMaker Faireの中日にあたる土曜日、2017年11月4日にJapanese ミートアップ Maker Faire Taipei(COMMUNE A7、Taipei)、2017年11月11日にJapanese ミートアップ Maker Faire Shenzhen(白石州美食街、Shenzhen)として、日本人メインのミートアップを行う。いずれもキャッシュオンデリバリーの参加しやすいミーティングなので、それぞれのMaker Faireを訪れるならぜひミートアップにも参加してみるのをおすすめする。
「ニコニコ技術部」が加速させたMaker Faire Taipeiへの出展
台北と深センはどちらも日本から近いほうのMaker Faireだが、同程度に近いソウル、香港、台南などに比べても日本からの参加者が増加しているのはそれぞれ理由がある。
台北はソウルと並んで日本から最も近いMaker Faireとして、2013年の第1回から日本人出展者が多めのフェアだった。そこにMaker Faire Tokyoがスペースの問題で落選する参加者が増えてきた2015年から、「ニコ技輸出プロジェクト」の一環として日本からの共同出展が始まった。ブースを「ニコニコ技術部(英語名のNico-Tech)」としてまとめて申請し、日本からの出展者はそこに作品を持ってくれば出展できるというものだ。僕はこの共同出展の呼びかけ人となっていて、出展登録し、参加希望者をオンラインで集め、現地で出展費を徴収するなどの世話役をしている。
当時のMaker Faire Taipeiの申込フォームは繁体字の中国語のみで、出展料も国際送金で台湾ドルを送る必要があった。僕は当時からシンガポールに住んでいて、ある程度こうしたやりとりに慣れていた。2013年からMaker Faire Taipeiに参加していて運営チームとも面識があったので、呼びかけ人をやることにした。
2015年の初めての出展は6組7人。一覧は今もニコニコ技術部の呼びかけサイトで見ることができる。
参加者は台北のMaker Faireも街そのものやカルチャーもたいへんに楽しみ、その時出会った外国人達と日本のMakerイベントで再会するなど、台湾との関わりを深めた。
僕以外の全員が関西や九州を地元にするMakerだったため、Maker Faire Tokyoに出展するよりも手軽で費用も安くすんだことも大きく、2016年には参加者が倍増し、15人程度になった。この年のグループには、NT金沢のオーガナイザーであり、Make:LSIプロジェクトの金沢大学の秋田純一先生やなど、金沢からの参加者もいたことなどから、このメンバー達は多くがニコニコ技術部の展示イベントNT金沢や、もちろんMaker Faire Tokyoなどで再会するなど、交流を続けていることで活動に勢いがついている。ミートアップ的な効用といえるかもしれない。
台湾からMaker Faire Tokyoへの出展や参加は毎年かなり多く(僕がざっくりMaker Faire Tokyoをまわったり知人に尋ねた感じでは30人ほど)、今後もますます盛んに交流していくことになるだろう。
中国への経済的な興味から増えるMaker Faire Shenzhenの訪問者
Maker Faire Shenzhenも同じく2015年に共同出展を行ったが、台北よりも暑いうえに野外展示になることや、インターネットや交通の問題などがあり、台北よりは出展のハードルが高く、現在は共同出展を行っていない。
日本からの出展者は年々増加していて、今年はPETS(台北から続いて出展)やひげにゃんのコネクト・ミー、寝落ちソルバーのMorning Project Samurai、未来ロケット株式会社、金沢大学、バキュームフォーミングの株式会社ラヤマパックなど、スタートアップ企業を中心に大学やMakerコミュニティあわせて多くの出展者が日本から向かう。
また、ここ数年「ハードウェアのシリコンバレー」と呼ばれる、イノベーション都市としての深センに注目が集まり、「Maker Faireを機会に深センを一度見てみたい」という人たちも多い。僕が2016年に深センのイノベーションについて出版した書籍「メイカーズのエコシステム」も、当初はMaker Faire Tokyoに来る人やFabcrossの読者みたいな人たちを想定して書いたのだが、実際は中国ビジネスや中国経済の研究者から問い合わせをいただくことが多い。
Facebookコミュニティ「ニコニコ技術部深セン観察会」などの様子をみると、そういうコンサルタント、シンクタンクや大手メーカーの人などを含めて、100人を超える人々が日本から深センに向かうようだ。僕が2014年のMaker Faire Shenzhenに参加したときは、日本からの来訪者は招待含めてせいぜい20~30人程度だったように思え、隔世の感がある。
出展してみると、Maker Faireとして、趣味を同じくするものが集まる心地よさと、とはいえ見慣れない外国人達に取り囲まれる驚きの両方がある。出展なりプレゼンなり、こちらから何かを見せる方がより楽しめると僕は思うが、Maker Faire Tokyoを見に行って楽しめる程度に、海外のMaker Faireも違うベクトルで楽しめるだろう。なにより経験者が口々に言うのは、「いくつか海外のMaker Faireを見に行った後の、Maker Faire Tokyoの面白さ」だ。
ぜひ海外のMaker Faireに訪れてみるといいだろう。